2025.5.8 フランス館にて

EXPO 2025 大阪・関西万博 フランスパビリオンの【平等と公平】テーマ別パートナーとして、女性活躍をテーマにした「キリ ウーマンエンパワーメント 大阪・関西万博フランスパビリオントークイベント」を開催しました。
各業界で活躍するグローバル企業および日本企業の女性エグゼクティブ、オピニオンリーダー、影響力のあるアクティブな女性たちをお招きし、女性がリーダーシップやしなやかな強さ、そして社会の中での存在感を通じて、より包括的な未来をどう築いていけるかを語り合いました。

登壇者紹介

セシル・ベリオ 氏(ベルグループ [本社:フランス] CEO)
小野 真紀子 さん(サントリー食品インターナショナル株式会社 代表取締役社⻑)
河端 恵子 さん(明治ホールディングス株式会社 執行役員 ウェルネスサイエンスラボ⻑)
西山 ももこ さん(インティマシーコーディネーター)


左から セシル・ベリオ氏、小野真紀子さん、河端恵子さん、西山ももこさん

初めに、ベルグループCEO セシル・ベリオが自身のキャリア、信念についてのオープニングスピーチを展開しました。

セシル・べリオ自身の経験と信念
私の経験から得た3つの信念をシェアしたいと思います。まず一つ目、才能に性別は関係ないこと。二つ目は、女性リーダーシップのロールモデルが必要であること。そして、三つ目は、自ら行動を起こすことで、社内のシステム・制度は変えられるということです。
私がよくお伝えするアドバイスとして、「PINコード」を紹介させてください。
PはPerformance(パフォーマンス)、IはImage(イメージ)、NはNetwork(ネットワーク)です。
女性はパフォーマンスを発揮することに多くのエネルギーを使うことが多くあり、頑張って働けば昇進できると思いがちです。しかし、さらにキャリアの階段を上りたいならば、イメージ=この人は何ができる、どんな人か、ということを、ネットワーキングを通じて内外に伝えていくことが大切です。リーダーシップとはよい仕事をするというだけではなく、システムを変え、皆とともにムーブメントを作っていくことです。ですから、イメージやネットワークが大切なのです。
私自身の成長のプロセスについてもお話しさせてください。以前、アンコンシャス・バイアスのテストを受けた際、自分自身がジェンダーについてのバイアスを持っていたという結果に驚きました。そうした概念は、文化、社会常識によって形成され、完全に取り除くことは難しい。ですので、それを認識した瞬間、目の前にいる人にしっかりと向き合って本当の意味で話を聞くということと、システムを変えていくということに責任を持つようになりました。女性、母親、組織のリーダー、などの様々な役割はすべてリアルなもので、(次世代や周りの人々に)道筋を示すことが私の役割であると感じています。

ベルグループとリーダーシップについて
ベルはフランスの家族経営の会社で160年の歴史があり、チーズ・フルーツ・植物由来製品を提供し、『キリ』などのブランドを持ちます。現在の目標は、より健康で、よりサステナブルな製品を提供することです。フランスではミッションに基づき活動する企業となり、サステナビリティへの責任と利益を両立させるという2つの柱で経営しています。これら2つが確立されることで、好循環が生まれ、未来に続く活動ができます。
これらを実現しているのが、インクルーシブ(包括的な)リーダーシップです。ベルでは、女性の活躍を後押ししています。なぜなら、才能に性別は関係ないからです。
大切なのは、マインドセットです。ベルとしては、女性の大志やリアリティを反映したシステムを整備しており、マネジャーポジションの半数が女性であるなど、成果が出てきています。しかしまだまだ理想には長い道のりがあるので、女性社員のスキルアップを図るプログラムを実施して社員の活躍を後押ししています。採用においても公正に、広い視点で採用するという人事方針を運用しています。

日本におけるキリの女性活躍応援について
こうしたベルの活動が一層意味を持ってくるのが、日本です。キリは40年以上、特に女性のお客様から愛されてきました。「自分にやさしく」というメッセージが大きな意味を持ちます。謙遜が根付いた文化では、自身の頑張りを認識する機会が少なくなってしまいます。ですから、忙しい日々の中で自分自身のためにひととき「間」を持ち、自身に意識を集中させ、大切な存在として考えることに意義があります。
今回、キリでは女性活躍応援の活動を開始しました。売り上げの一部を、NGOであるWomen‘s Eyeに寄付し、東北に住む女性たちのリスキリング等を通じてそれぞれが自分らしく生きるお手伝いをできればと考えています。
「雨垂れ石を穿つ」という日本のことわざがあります。小さくとも、一貫した行動が大きなインパクトにつながるという意味で、その場に参加し、チャンスをつかんで、仕組みを変える一歩を踏み出すのです。


最後にお伝えしたいのは、リーダーシップとは型にはまることではなく、自ら声を上げ、一歩踏み出すことです。ベルでは、リーダーシップはデア・ケア・コミットという3つの価値観があります。お客様へ提供する商品やお取引先とのパートナーシップ、そして社員の在り方など、すべての活動にこの概念が根付いています。
複雑な現代社会において、ダイバーシティ(多様性)は乗り越えるべき壁ではなく、私たちの大きな力になります。
才能に性別は関係ないこと。今までになかったロールモデルになること。古い前提を問い直すこと。日本は、変わっていく必要がありますが、これらを実現できる可能性を大いに秘めています。型にはまった生き方を提示するのではなく、すべての女性が、自分の言葉で、自分らしい生き方を定義できるような社会につながるためのお手伝いをできればと考えています。
誰もが“キャリアか、自分のアイデンティティか”そのどちらかを選ばなければならない時代は、終わらせましょう。
女性が力を発揮し羽ばたくとき、私たち全員が共に前へ進めるのです。

1.人生における夢や目標と現実のギャップにどう向き合い、どのようにバランスを取りながら歩んできましたか?

小野さん

「入社して最初の仕事が、フランスのワイナリーの買収でした。それがひと段落着いたときに、フランスで仕事をしてみたいという思いが湧いてきました。でも当時、自社では女性の海外駐在員はいませんでした。なかなか駐在の希望が叶わなかったのですが、日本での仕事を一生懸命頑張っているうちに、フランス駐在の機会が巡ってきました。あきらめずに夢を持ち続けて目の前の仕事をきちんとする、というのがチャンスにつながったのかなと思います。
私の世代では、まだそんなに女性のリーダーというのが多くいなかったので、(打ち合わせなどで)女性が私だけ、という場面はたくさんありました。それでも私は、性別に関係はないと考え、そうした場面でも構えずに、気にしないで取り組もうと意識していました。
会社としてもダイバーシティの取り組みを強化しており、海外の企業と仕事をすることも多くなっています。そうなると、特に自分のことを知らない人たちと一緒に仕事をするという側面もあるため、改めてコミュニケーションが重要だと感じています。そこで私は、自分の意思をはっきり伝えたうえで、相手との信頼関係(TRUST)を築くことを、ビジネスにおいて一番大事にしています。」

河端さん

「私は元々幼いときから、『自分の力を発揮してみたい』という個人的な野心や欲に突き動かされ、様々なことにチャレンジしてきました。その中で、『私が今発言しなくては』『本来はこうあるべきなのでは』とギャップや課題を少しずつ見つけ、解消したいと感じて行動に移してきました。それが社会課題の解決やお客様への価値提供につながっていきました。そうしたことを通じて、現実を目標に近づけることができました。
研究の仕事は、イノベーションを起こすことなのでたくさん失敗することでもあるのです。つまりたくさん挑戦しなければいけない。ですが『女の子には失敗させないように』と、子供の時から挑戦に対して周りからブレーキがかかることが多いです。それに対して、自分自身は、『まず挑戦してみたい』という気持ちがいつもありました。その中で、自分のキャリア形成につながった部分もありましたし、女性の活動にブレーキがかかっているということに対して問題意識を持ちながらやってきました。」

西山さん

「インティマシーコーディネーターという職業について海外に住む友人から聞くまでは、私はロケコーディネーターとして男性が多く活躍するテレビや映画業界で仕事をしていました。当時はジェンダーという意識もあまりなく、『何かおかしくないだろうか?』というモヤモヤした気持ちがあったのですがそれを言語化できませんでした。インティマシーコーディネーターの資格を取ったら何かが変わるかもしれない、という気持ちで勉強を始めました。
元々、ロールモデルが見つからず、目指す将来像やビジョンも明確ではありませんでしたが、とにかく目の前にあることにひとつひとつに取り組んできました。今でも思うようにできないことは多々あります。インティマシーコーディネーターとして皆さんの前でお話しさせていただくことが増え、正論を語りながらも実際の自分が実践できていない点もあります。
理想の自分とのギャップを埋めるため、振り返りを忘れず日々課題に向き合いながら仕事をしています。」

三人のお話を聞いたセシルは次のように語りました。
「私は夢や目標と現実のギャップを感じたとしても、無理に埋めようとはしなくていいと考えています。人の前に立ち、リーダーシップを発揮することは永遠に続くものですし、私自身もベルに入社した時にはCEOになるとは予想していませんでした。日本で語られる『生きがい』という概念は素晴らしいと感じています。自分の居場所や人生の目標を見つけること。私は元々人文科学に関心があったので、食品のマーケティングの道を志しました。食品は環境、健康、酪農などにつながり、多岐な分野で意義のある活動ができるので自分の仕事に意義を感じています。
その過程でこのようなギャップを感じることは必ずあると思います。しかし、そのギャップを埋めようとして、自分自身を見失うことは決してしてはいけないと思っています。まずは、自分自身の生きがい、人生の目標を見つけ、それに向かって取り組むことが必要だと考えています。」

2.自身の可能性を最大限に引き出し、目標を達成し続けるために、日々意識している習慣や行動の工夫、マインドセットがありますか?

セシル

「現代社会においてもっとも価値があるのは、お金ではなく時間です。そこで、自分の人生の『アジェンダ』をコントロールすることが重要です。CEOとして様々な役割で常に働いていますが、やはりミーティングがとても多いため、ミーティングに自分のアジェンダをコントロールされないよう、時には一歩引いてどこに時間を費やすか考えることが大切だと感じています。どのステークホルダーにどれだけの時間が必要か。自分自身や家族、仕事に対しても。仕事については、タスクとステークホルダーを厳格に見極め、時間をどのように理想的に分配するかを考え、実行しています。」

小野さん

「私もそうですが、自分のスケジュールを自分で確保できないことが多くなってしまいます。忙しい中でも考える時間を作ることが大事であると思っていて、オン・オフの切り替えを非常に大事にしています。友達とワインを飲みに行ったり、週末に温泉に行ったりして、頭も体もリセットして、英気を養うように心がけています。」

河端さん

「(ウェルネスサイエンスラボ長として)研究に没頭することがストレス解消につながることもあります。あとは、『忙しいから、管理職なんてできない』と言う方もいらっしゃいますが、案外、リーダーになったら周りが予定などを合わせてくれることもあり、逆にストレスが減ることもあります。リーダーになることを選択肢として残してほしいと思います。」

西山さん

「私は、仕事が嫌だと感じたら、いつ辞めてもいいと考えています。海外から日本に帰ってきた時、(仕事で)認められなきゃいけないとずっと感じてしまう時期がありました。その時に、自分はどうしたいか、やりたいかどうか考えるようにしています。逆に、自分らしさ、やりがい、目標、モチベーションなどに関しては、考えないようにしています。(きちんとしなくてはという)日本的な思考のループにはまってしまわないように、今は毎月休みをとって旅行をして視野を広げています。」

皆様へのメッセージ

小野さん

「最初は100%自分ができる、という自信がなかったとしても、チャンスが巡ってきたら掴んで挑戦してみて欲しいと思います。何でもかんでも1人でやらなくてはというわけではなく、周りにも頼りながら、『きっと何とかなる』というポジティブ思考で失敗を恐れずにチャレンジしてください。」

河端さん

「自分自身に対して持っている無意識のバイアスで自分の可能性を決めてしまっている、コントロールしてしまうことってよくあると思います。だからこそ、どんなことも受けてみる、人から勧められたらなんでもやってみる、というマインドで、どんなことにも恐れずチャレンジしてほしいなと思います。」

西山さん

「とにかく口に出すことが大事だと考えており、言い続けることでその目標を達成できると信じています。私は、一日一回、部屋の真ん中で実現したいことや願望を大声で叫ぶといつか叶う、というお話しをどこかで聞いてから、それを実践しています。自分なんて、とは思わず、良い仕事したいな、こんな仕事したいな、などと口に出すことで、誰かが覚えてくれているので、ぜひ実践してみてほしいです。日本人特有の謙遜は持たずに、なんでもやってみることが大事です。」

セシル

「私にとっては、仕事と私生活のバランスをとるというより、ハーモニーという言葉がしっくりきます。仕事と自分の関心が流動的に相互作用するイメージです。自分自身にエネルギーをくれるものに注力してみてください。もっと仕事しなさい、弱点を改善しなさいと言われることもありますが、人生はシンプルです。自分が得意なことに注力しましょう。私自身もCEOになることが目的だったわけではありません。ただ自分の得意なことに注力して成長したいと努力してきただけなのです。」

日本で40年以上愛されてきたキリ。
ユーザーの皆様が1ポーションを口にしてほっと一息、自分にやさしくする瞬間に寄り添ってきました。
現代の社会において、女性それぞれの夢やポテンシャルを実現し、自分自身にやさしく、過ごしやすい社会につながるようにキリはサポートの活動をこれからも続けていきます。